
第13回 東アジアと同時代日本語文学フォーラム 2025 北九州大会
「第13回 東アジアと同時代日本語文学フォーラム 2025 北九州大会」では、本大会および次世代フォーラムにおいて発表を行う、個人研究と3~5名程度で構成されるパネルセッションを募集します。
個人・パネルともに、特集に関係するテーマと自由なテーマのいずれでも応募できます。今大会の参加には参加費が必要となります。

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第13回 東アジアと同時代日本語文学フォーラム 2025 北九州大会 特集
近現代アジアの文化とアダプテーション:横断、順化、創造
アダプテーションとは、ある作品・文化現象が異なるジャンルやコンテクストに置き換えられることで、新たに再創造されるプロダクトやプロセスのことである。ある作品は、異なる環境に置き換えられるなかで、再創造される作品との関係性を問う「原作」として発見される。そして、再創造された作品から「原作」が逆照射されることによって新たな解釈が生まれることにもなる。両者は、時に重なり合い、あるいは矛盾しながら、オリジナル/コピーといった区分を問い直しつつ、時代、国境、ジャンルを越境する。そのようにして作品が脱中心化する運動性に、アダプテーション論の一つの焦点がある。
近現代アジアでは過去から今日に至るまで、多様な物語が別のジャンルやコンテクストに置き換えられてきた。また、翻訳が行われるなかで、言葉が移し替えられるだけでなく、異なる文化圏に適応するように変形を続けてきた。アダプテーションへの注目は、「原作」と再創造作品との運動性を問題化することに加え、近現代アジアにおける順化、越境、横断のありようを明らかにすることにもつながる。
たとえば、今日の各種アニメーション作品は、小説や漫画をアダプテーションしたものが少なくない。小説が映画化されることもあれば、逆に人気になった映画が小説化される場合もある。演劇は過去の作品をパロディ化しているし、ポップ・ミュージックの分野で過去の楽曲をサンプリングする手法も広く取り入れられている。あるいは、ゲームにおいても映画やアニメーション作品とのメディア・ミックス展開を抜きにして語ることはできない。そして、こうしたさまざまなアダプテーションが、国境を越えて行われていることもまた見過ごすことはできないだろう。
加えて、メディア状況が多様化する現代だけでなく、過去においても、作品の再創造は盛んに行われてきた。明治期から大正期の通俗的な物語の人気は、演劇化によってもたらされた部分が大きい。戦前期には演劇の上演や映画の公開が国策的に進められたし、戦後は近代日本文学を「原作」とする文芸映画が多数制作された。一人の表現者が、映画、小説、演劇など、さまざまなジャンルを越境して自身の活動を展開している例も数多くある。現代だけではなく過去においても、国境を越えるアダプテーションは盛んに行われてきたと言える。
このように、時代や国境を越えて展開されてきたアダプテーションは、その理論的枠組みが整備されると同時に、個別的事例の分析と検証が活発に行われている。異なるジャンルや文化圏へと越境する作品を取り上げる研究はもちろんのこと、古典作品の改作から現代の問題を読み取ろうとするもの、異なるメディアにおける表現の違いからそれぞれの芸術ジャンルの特質を浮き彫りにするもの、教育現場におけるアダプテーションの実践について論じるものなど、多様な形で展開されている。アダプテーションについて多方向から検討が加えられることで、文学・文化現象の受容と消費の運動性を捉えることが可能となるだろう。
以上を踏まえ、第13回東アジアと同時代日本語文学フォーラム北九州大会では、近現代アジアでさまざまなジャンルを越境し、メディア横断的に流通する物語を、アダプテーションの観点から検討する個人発表・パネル発表を募集する。アダプテーションに関する思考が、日本語文学・日本文化の研究に新しい展開をもたらすことを期待したい。
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